洛中洛外 虫の眼 探訪

洛中巨樹探訪
京都御苑の樹木
2008年10月06日(Mon)
<京都御苑の衛生写真> <樹木地図>
  京都御所と一般に言い習わされている「京都御苑」は京都御所の建物の周辺、東西700m、南北1.2Kmにおよぶ地を築土と石垣で囲み九門を設け、市民が自由に通行でき、憩えるようにした場所である。明治維新まではここには皇族・公家の邸宅や寺院の里坊など、200をこえる家屋が密集していたそうである。大正の御大典を機に建物類はすべて撤去され、芝生や樹木を植えて公苑となった。かつての公家の邸内にあった庭園や鎮守の社はそのまま残されたため、老木大樹も多い。蛤御門から入った苑内、京都御所の南西角の玉砂利のなかにあるムク(幹周4.82m)もその一つである。
 このような経緯からして容易に分かるように、京都御苑は奈良公園とはちょっと違った趣きの公園である。苑内は砂利と芝生がしきつめられた松林で構成されており、野性味の少ない人工植栽の多い、手入れの行き届いた平坦な緑地帯である。最も本数の多い樹種はマツである。それもマツとしてはけっこう太いものがそろっている。幹周り3m以上はざらにある。ちなみに、クロマツの最大径は3.89mとなっている。幸い今のところ松喰虫の被害もなく、濃い緑を一年中たのしめる。
 次に、特筆すべきは、築土と石垣の上のウバメガシの垣根である。京都市内にはこのウバメガシの垣根が大変多い。京都大学もその一つで、井伏鱒二の「ウバメ樫」に活写されている。『おい、すごいぞ。あれをみてごらん。ここにもウバメ樫の垣がある。大したものだ』
 周辺の築地塀際にはムク、エノキ、ケヤキのニレ科の喬木が多く繁っており、市内の喧噪を遮っている。幹周りは、市内の各所で見られるものよりも一回り大きい。エノキの最大幹周りは、5.91m、ムクは4.97m、ケヤキは4.95mである。幹周りランキングベスト50中にこの3 樹種で27本を占めている。クスノキが16本、イチョウが6本、残りの1本が幹周り4.02mのシイである。
 クスノキの最大径は苑内では6.24mであるが、苑内にある宗像神社(京都御苑には属していない)には857mの大木が隠れている。幹周り5.68mの最大径のイチョウも目立たない塀際にある。
 ウメ、モモ、サクラは苑内にまとまって植栽されており、梅林、桃林、近衛邸跡の桜園は、春先から大勢の人を引きつけている。秋は苑内に点在するイチョウが見事な紅葉を見せてくれる。
 その他、思いつくままにあげると、センダンの大木、松に寄生し宿主が倒れても元気なサクラ、皮だけで生きているサクラ、サルスベリ、カエデ、イチイガシ、アラカシ、シリブカガシ、スダシイ、オガタマ、クロガネモチ、モミ、ツガ、カゴノキ、イスノキ、ナツツバキ、モクレン、ナツミカン、メタセコイヤ、ムクロジ、タイワンフウ、ハゼノキ、フジなど一通りの樹種はそろっている。

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